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ピアレビュー:SOI STANCE

蔵多優美

2026.06.01

SOI STANCE

はじめに

本インタビューは、一般社団法人鳥取クリエイティブプラットフォーム(以下、TPlat)が取り組む評価制度づくりの一環で、2024年度にTPlat会員団体に対して実施したピアレビュー(同業者・同僚同士の事業評価)を、県障害福祉課及びあいサポート・アートセンターが支援する団体に応用し、「創造的な活動を相互に見つめ合うピアレビュー事業」として行うものである。
「TPlatのピアレビュー」を「障害者アート」に取り組む団体に応用し、言語化が難しいアートの効用や課題について、同様の取り組みで試行錯誤する当事者(ピア)の目線から言葉をつむぐことを目的とする。

また、TPlatのピアレビューは、評価シートに基づく客観的な評価も視野に入れた仕組みを考えているが、今回これを「障害者アート」に取り組む団体や活動に応用するにあたり、既存のシートをそのまま使うのではなく、今回のインタビューを元に(インタビュー後に)シート自体のアレンジを考えることとした。なお、インタビューの質問は、既存シートのA・B・Cの区分も想定して構成したものとする。

なお、筆者は、鳥取出身で2019年にUターンした後、県内の芸術活動に関わっている。この近年は、デザインを自分自身の軸として、福祉・教育・アート団体・対話の現場に対する絡みが増えており、アートスペースからふるやあいサポート・アートセンターにおける広報支援も活動の一環である。そのように「障害者アート」の活動における評価対象団体の「ピア」として、「SOI STANCE」代表・鎌田 亜希さんのインタビュー内容をまとめ、当事者のみならず第三者に対しても発信することで、活動の意義についての深い理解を促すことに繋げていきたい。

SOI STANCEが生み出すアート

SOI STANCEのミッション
「SOI STANCE」は、鳥取県米子市で障害福祉サービス事業、自立訓練(生活訓練)、就労継続支援B型を運営する事業所で2019年12月に設立された。名前の由来は、

“利用者さん、利用者さんのご家族に対して、寄り添い「SOI」の姿勢「STANCE」で支援します。地域の方々、スタッフ、スタッフの家族にも寄り添いの姿勢を大切にします。「SOI」はフランス語で「個性(ソア)」を意味します。”

という思いが込められており、代表・鎌田さん自身の声を聞くとリハビリテーション(以下、リハビリ)職に長年携わる中で培われたであろう「寄り添い」や「個性(ソア)」への対する思いや考えの下、支援が展開されているように捉えられる。

また、「SOI STANCE」の強みは、リハビリ専門職のスタッフがリハビリと就労支援を同時に行うことであり、利用者は障害福祉サービスの自立訓練(生活リズム改善、耐久性の向上)と就労継続支援B型(一般就労へのベース作り)を受け、目標として一般就労への最終雇用や作業所内での様々な役割を通じた就労を掲げている。

鎌田:「医療専門職がリハビリをしながら就労支援が出来る場があると良い」という考えが沸き、回復期リハビリテーション病棟で勤務していた仲間と一緒に立ち上げた、というのが設立の経緯です。現在、作業療法士のリハビリ職スタッフが5名いるので、他事業所よりも脳血管障害の方が利用している割合は多いと捉えています。利用者は、それ以外の身体障害、発達障害、知的障害、精神障害など様々な疾病を抱えた方と幅広く受け入れています。「SOI STANCE」としては、自立訓練と就労継続支援B型(以下、就労B)の2つの障害福祉サービスで立ち上げていて、特に自立訓練は2年間の有期限の支援です。これは対象者が退院・退所したての方や家の中での様々な介助(食事やトイレ、風呂など)が必要な方に対する支援なので、リハビリ職が介入して期限の中でどこまで底上げ出来るか体力をつけさせられるかが課題です。そして、うちの作業所だけではなく就労Bにステップアップして、最終的には一般就労を目指す。中には、自立訓練の支援のみで一般就労や自立訓練を挟まずに就労B→一般就労など様々なケースがあります。私たちのミッションとしては、一般就労への最終雇用ですが、利用者さんは様々な疾病を抱えた方が多く生まれ持った能力もあるので、例えば障害年金をもらいながらうちの作業所でずっと働きたいという方もおられます。私たちとしてもステップアップもありつつ、長くうちでより良く過ごしていく場所であるためには、と考えるといろんな役割でうちの作業所で働いてもらうのも一つの目標として挙げられます。

「SOI STANCE」では、駄菓子屋やカフェといったユニークな事業を展開している。両事業とも自立訓練のための作業の役目を担っており、駄菓子の袋詰めや値札貼り、料理は生活支援のためでもあり、作業を分担すれば様々な疾病を抱えた方とも共同で作業することが可能である。何より、作業の中で必ずコミュニケーションが生まれることや開かれた事業を展開することで、地域の人も来られる、開かれた作業所にしたいという意図がある。

SOI STANCE内でのアートの立ち位置
鎌田さんが「SOI STANCE」を立ち上げる際、奈良県香芝市にあるGood Job!センター香芝をモデルにしたという。

鎌田:私自身がアートが好きということもあるんですが、リサーチしていく中でGood Job!センターさんのHPを見た時に「雰囲気も良くて、カフェもあり、創作活動もしている…この要素を私たちも取り入れたいな」と。私個人の思いが強いかもしれないですが、病院を抜けて、自分の判断でしたいことが決められるようになった時に、自分の好きなアートも取り入れたいなって率直に思ったのもあります。なので、最初からカフェを作る時も、その壁にピクチャーレールの取り付けを想定して工事したりとか。アート活動をしたい利用者さんや、制作したいなっていう利用者さんが来てくれたら、一緒に取り組もうかなと思いつつ立ち上げたら、たまたま「アート活動をしたいんです」って言ってくれる人が入ってくださって。じゃあ実際やってみよう!というところからスタートしました。

「SOI STANCE」でのアートとは、利用者が楽しむ活動ということを核とし、2種類の性質があるという。

1.仕事としてのアート

 a. 就労B活動作業の一環として実施

  i. 但し、メイン活動ではないため、空いた時間で実施をする

 b. 利用者の要望に対して素材を用意しスタッフと相談しながら作品を生み出す

  i. スタッフは美術の指導者ではないため、作品制作の伴走者を担う

 c. 鳥取県立バリアフリー美術館(以下、BFM)に収蔵された作品やSOI STANCEの外部展示、あいサポート・アートとっとり展へ出品する作品はこの活動で生み出されたもの

  i. BFMに収蔵されている山本美和〈お寿司のバラエティーパック〉はこの活動で生み出された

  ii. あいサポート・アートとっとり展への作品応募は当初は団体として取りまとめていたが、近年は利用者個人で対応している

 d. 商品デザインやまちなか、美術館の展示など

2.イベントごととしてのアート

 a. モノづくりをしながらリハビリ要素を兼ね備えたみんなで取り組めるアート活動

 b. 利用者に対しての癒し・ケアとしてのアート(喋りたい、言いたい、褒めて欲しい)

 c. あいサポート・アートセンター障がい者アート活動支援事業補助金を活用している

  i. 活動の中で生み出された作品は、SOI STANCEの外部展示で臨床美術コーナーを用意して展示している

  ii. 外部展示は、あいサポート・アートセンター障がい者アート活動支援事業補助金の「個展等開催事業」を利用し実施している

2種類の性質があることで「SOI STANCE」利用者は満遍なくアート活動に参画しているのだという。アートに対して作品を生み出したいという強い希望を持つ利用者もいれば、アートに関わることで癒しを求める利用者もいるためだ。つまり「個」に応じてアートの解釈が違うように、「個」に応じたアート活動を「SOI STANCE」が提供しているのだと捉えられる。それは名前の由来としても掲げられた「寄り添い」や「個性(ソア)」がアートの観点でも発揮され、それを元に活動をしていくのだ、という強い意思にも感じられた。

あいサポート・アートセンター障がい者アート活動支援事業補助金の活用について

「SOI STANCE」では設立以降の2020年より、あいサポート・アートセンター障がい者アート活動支援事業補助金を利用したアート活動を実施しており、現在は、文化芸術活動促進事業【ステップアップ型】を利用した臨床美術の活動に取り組んでいる。「SOI STANCE」内では、利用者に対しての癒し・ケアとしてのアートと捉えており「クリニカルアート鳥ト雲(とりとくも)」に所属する臨床美術士2名が年間に8回ほど来所(実施回数はその年々によって異なるが補助金の交付要綱に基づき6回以上を目指している)し活動をしているとのことだ。

臨床美術は、絵やオブジェなどの作品を楽しみながら作ることによって脳を活性化させ、高齢者の介護予防や認知症の予防・症状改善、働く人のストレス緩和、子どもの感性教育などに効果が期待できる芸術療法(アートセラピー)のひとつだ。〈「クリニカルアート鳥ト雲」より引用〉
鎌田さんは、この活動を通して「クリニカルアート鳥ト雲」講師による作品に対してのポジティブ・フィードバックが多いことが利用者にとって何よりも大事だと語る。

鎌田:「クリニカルアート鳥ト雲」から来ていただく先生方は、皆さんがしっかりとポジティブなフィードバックをたくさんしてくださる。最初に見本だけ示したら後は皆さんのいいようにやってもらったらいいですよ、やり方は全然否定しないし思う存分やってくださいね、という感じなので、自由に利用者さんもバーッてやって、全てを拾ってくれている、という感じ。臨床美術の中に、作品を否定しないようなルールがあるのかな、と思っているんですが、作品一個一個に言葉をちゃんと添えてくれて、最後みんなで総評して、ここが良かった・あれが良かったというここに対してのコメントをして終わるので、その会が利用者さんにとっては凄く心地の良い時間になるんですよ。出来る作品にも関心はあるけど、それは手段としてで。どちらかと言うと、そこから得るフィードバックで癒してもらうというのか、癒しを求めてただ参加するみたいなことでしょうか。しゃべりたい、言いたい、褒めてほしい、というような。私としては、アートなんだけど、言葉や声かけを含めて指導してもらってる、という感じなので、やりたいという利用者さんは多いです。言葉をかけてもらうのが嬉しい、という感じですね。利用者さん全体に対して治療というか、癒しの意味で臨床美術をすることになっているかもしれません。日頃のアート活動で実施するのではなく、「イベントごととしてのアート」として実施しているのは、多様な利用者さんへ「みんなでイベントでアート活動、物作りができる日」を当初から作りたい思いがあったからですね。

「SOI STANCE」でのアートには2種類の性質があると先述した。この取り組みは「イベントごととしてのアート」であり、アートに関わることで癒しを求める利用者を対象としたものである。一方で、アートに対して作品を生み出したいという強い希望を持つ利用者に対しても、効果があるという。インタビューを通じて、就労B活動作業の一環として普段の就労の中で行われるアート活動を見学させていただいた。利用者それぞれがアートキャンバスに向かい描いていくのだが、各自のおしゃべり=コミュニケーションが止まらない。「もうそこまで出来たの凄い!」「やっぱりそれを可愛いく描けるのは良いよね〜」「これ商品化しないかな〜!」「この色使おうと思うんだけど、どう?」といったようなやりとりは、利用者と鎌田さんのみならず、利用者同士でも交わされている。支援の側面だけではなく、褒め合い・高め合いのようなものだと受け取れた。「SOI STANCE」での就労ではこうしたコミュニケーションが当たり前に交わされており、時には、依頼された仕事を確実にこなすために「今日は午前中お喋り禁止」という約束をしなければならないほどだ。

鎌田:臨床美術の活動を通じて、作品制作に対するモチベーションが上がったり作風が変わる方もおられます。ポジティブなフィードバックが凄く多いので、本人の自己肯定感が凄く上がって作品制作に生かされているのではと。講師からだけではなく、利用者同士の交流にも繋がっている。自閉症の方は枠から外れることが難しい場面もあるのですが、臨床美術の活動で「こんなことをやっても良いんだ」という気づきになる。この2,3年で毎年実施していると初年度と比べて凄く変わったな〜と思う利用者さんもおられますね。中には「◯◯さんと比べて自分の作品はダメだ」と思っていた方がポジティブフィードバックを通じて「自分はこれが出来るんだ」という自信に繋がり作品がどんどん生まれていくこともあります。

また、補助金を利用した活動は【個展等開催事業】を用いたSOI STANCE 展を米子市美術館で開催。今年度は会場確保の兼ね合いで実施が出来ていないが、過去の取り組みでは、普段の活動で制作された作品や臨床美術の作品を展示していたようだ。また、作業所と会場が近いため、「SOI STANCE」の利用者みんなで作品を観に行くことも。その中には、普段アート活動しない利用者や臨床美術の取り組みにも参加したことのない利用者も含まれているのだが、みんなそれを楽しみにしている。「SOI STANCE」というチームの中にアートがあるのは当たり前のことなのだ。

広がる未来に向けて

アート作品の展開と「アート」担当スタッフの必要性
「SOI STANCE」では、施設内外での就労がメインであり、時期によっては繁忙期もある。そのため、メイン業務が忙しいとアート活動に時間を割くのが難しいという。

鎌田:利用者は就労に向けて来所するという目的があるので、アート活動ばっかりすると目的からずれるというのは若干ありますね。うちに来所して、週4〜5日に10〜15時ぐらいまでは仕事ができる体力をつける、ということをやっていくので。メイン業務が落ち着いた頃に「今日アート活動する人」という形で募ったり、当人から「そろそろ活動がしたいです」という意見を聞いた上で「今日は活動できるよ」と時間割を組み立てるような形で現在は実施してますね。

「SOI STANCE」で生み出されたアート作品は、現在3種類の方法で広がりや活用を見せている。

  1. 物販・商品販売(アート活動を加工し、SUZURI(ECサービス)を活用)
  2. 作品レンタル(今後広げていきたい、現在は高知健康科学大学に作品が飾られている)
  3. 作品を披露する場を増やす(米子・境港市内の美術館や企業のギャラリースペース、鳥取県立バリアフリー美術館など)

いずれも鎌田さんが担当しており、ご自身が忙しくなると手が回らず、「ぼちぼち進めている」のだという。現在のアート作業支援は鎌田さんが行っており、他のスタッフが仕事を調整し鎌田さんが支援に注力出来る隙間を産んで実施しているようだ。専門人材の必要性も感じているが「SOI STANCE」内でのアート活動はメインではなく副次的だと捉えられるので、そこまで踏み出すのは難しい。「非常勤でいると助かりますが、私自身も作品展示はこうしたいといった考えもあるので…」と話す鎌田さん。作品の広がりや活用の動きを止めないのには利用者への「寄り添い」や「個性(ソア)」の視点に他ならない。

鎌田:例えば、高知健康科学大学には縁があって試験的に飾っていただいてるのですが、利用者さんに伝えると「自分の絵が高知県まで行っている。じゃあ次何描こうかな」という意欲に繋がっているように捉えてます。日々描いているアート作品全部が外に出すものでもないと思うのですが、続けていると驚くような作品が生まれてきたりとか、あるいは作ってる側として見てもらいたい、という思いだったり、そういうのが出てくることがあるってことだと思うんですよね。作業や自分のために描いてたものを展示したら、思いのほか反響が良くて、出した側も嬉しくってどんどん展開していくような。利用者さんの中にお寿司のネタとか描くのが好きな山本さんがいるんですけど作品が展示されると嬉しくなっちゃって。周りの利用者さんも「山本さんすごいよね」と声かけも出てくるし、「じゃあアートといったら山本さんでしょ」というポジションまでつくような感じになっちゃって。ファンの人もついてくれて、カフェに来てくれて、「山本さんの他の絵も見せてもらってもいいですか?」と言って来てくださったりだとか、本人もとても喜んでおりますね。レベルアップじゃないけど、深まってる感じ。

「SOI STANCE」のアート活動の中長期展望はしっかり考えたことはないと話す鎌田さんだが「街中にアート作品が当たり前にある世界」は一つの目標として描いているとのことだ。

鎌田:(先述した)大学の中や、例えば路上ポストでもいいのですが、いろんなところにアート作品が米子の街にも点々とあると良いな、というのは元々思っていて。皆生温泉のような観光地とか、ちょっとしたところに障害者アートが飾ってあったり、タクシーにラッピングされてたり。そういったことが当たり前になるといいなというのが一番大きなざっくりとした目標です。だから、「SOI STANCE」という事業所がアートやってるよ、が街の中にも少しずつちょっと広まればいいなと思いながら、展示場所を美術館や企業のギャラリースペースをお借りしてやったりとかもしてますね。

一方で展望を語りながら、「SOI STANCE」のアート活動はどこまで利用者を支えるか、という悩みもあるようだ。

鎌田:利用者さん個人がアート活動を主とし、アートで収入を得ることが出来れば尚良いという気持ちはありつつ、支援していくのが難しいというのも現状です。特に精神障害の方だと、絵の内容も精神の波によって全然変わってくるので本人の思いと現実とのギャップがだいぶあったりします。それを前提として、スタッフが背負って進めていく、という労力も必要です。一方で自閉症の方や知的障害の方はルールを守ろうとする特性があるためアート活動を定期的に楽しみながらコツコツとされる傾向にあり、「嬉しい、楽しい、もっとこれからも作りたい」という感じになっていくんですよね。疾患の特性を踏まえた支援が必要です。作業療法士は、精神疾患や心理的な不安を抱える方に対し、創作活動、運動、日常生活動作などの「作業」を用いて、精神機能の安定や社会復帰を支援する専門職です。なので、どこまでどう促していいか、というのが、利用者さんによっても目標が変わってきますね。癒しの手段としてのアートであれば別に問題ないのですが、目標を高くし過ぎると当人の人生の方向性までが揺らぐ人も出てくるので、普通に一般就労の方をきちんと考えて生活を安定させた方が良いのでは、というケースもありますね。どこまでがどう支援で、どこまでが楽しみで、どこまでが仕事で、という基準が難しいと感じます。

専門人材の必要性を感じつつ一歩踏み込めない現状は、「SOI STANCE」の強みや核がリハビリ職=作業療法士=精神機能の安定や社会復帰を支援する専門職にあると言え、「表現」によって社会復帰を妨げてしまうことになると本末転倒ではないか、と捉える日々の葛藤もあるように感じられた。

鳥取県作業療法学会での作品展示
鳥取県内には、「一般社団法人鳥取県作業療法士会」という団体があり、鳥取県内の作業療法士同士の連携交流を図ることを目的とした活動を行っており「鳥取県作業療法学会」の活動もその一つだ。

2025年12月21日に開催された「第21回鳥取県作業療法学会」では、学会長を鎌田さんが務め、講演に関わるコーディネートのみならず、アート作品「わたしとあなたのあいだにあるもの」を鎌田さん自身が企画制作展示を主導した。この展示は、鎌田さんがこれまでに関わってきた方々が内面で感じていることや考えについて言葉として表現したインスタレーション作品である。展示における作業は今回の学会でチームを組んだ実行委員メンバーで行っており、展示された言葉を打ち込む作業は実行委員メンバーのみならず「SOI STANCE」利用者も作業を担当したとのことだ。

鎌田:「わたしとあなたのあいだにあるもの」というテーマで考えてやったんですけど。障がいがある人の中でしか感じれない、なんだろうな、言葉にも絵にもできない難しいような感覚みたいなものを、臨床場面でずっと聞き取る仕事だなと感じていて。例えば「ヒリヒリする」「そこは何かラップがついたような感じがする」とか、そういう独特な感覚をどうにか表現を利用者さんではない、見に来てくれた人に伝えられないかな、という思いがずっとあって。今回の学会が良い機会だなと思って、利用者さんにいろいろ聞き取ったりとか、自分が感じたこととかを言葉で、アートにしようと思って制作をしました。全部A3の用紙に利用者さんが言われたこととかを打ち出して表現し、会場内を歩きながら読んでもらって、鑑賞した人が最後にどういう感覚に変わったのか、ということをやりたくて。

当日のみ開催された展示は、来場者から多くの反響をもらい、展示を見た講演登壇者から「自分が関わる本の中に一部そういう要素を取り入れたい」「この展示の名前を自分の書籍の題名に使わせてもらってもいいか」などと、いろんなアプローチがあり評判が良かったとのことだ。

鎌田さんは展示をまとめたInstagramの投稿で以下のように言葉を綴っている。

障害の有無だけでは語りきれない、その人 固有の感覚や世界の捉え方がある一方で、
人が落ち込んだ時や前に進もうとする時に支えとなるものには、立場をこえて重なる部分があります。

その「違い」と「共通」のあいだにあるものを、来場された方々がそれぞれ感じ取っていただく展示となりました。

来場者の方々から
とても良かった、感動した
考えさせられた、など。
大変ご好評頂きました。
 
頑張って制作して良かったです。
報われました…

おわりに:筆者からの見解

筆者は、2022年頃にSOI STANCE CAFEを利用したことがあり、就労Bの作業所だという情報は頭にインプットしていたが、オシャレで素敵なカフェだな〜と美味しくご飯をいただいた記憶がある。また、2025年春に鎌田さんに初めてお会いし、広島での障がい者アート活動を一緒に視察した際に「この方のコミュニケーション能力や作品に対しての見方があるからこそ、SOI STANCE CAFEのようなオシャレさに繋がるのかな」と捉えたこともあった。

しかしながら、今回のインタビューを通じて、鎌田さんご自身のバックボーンかつ核となっている「作業療法士」というリハビリ職の存在及びそこで培われたであろう「寄り添い」や「個性(ソア)」が「SOI STANCE」の姿勢「STANCE」であるのだ、ということを強く捉えられる時間となった。

アート活動=作品を生み出す・発表する、という捉え方もあるが、それだけでは無い。生み出された作品を鑑賞することやアートへの理解を広げることもアート活動だと言える。それは筆者自身が鳥取県立美術館での鑑賞ファシリテーションボランティアや鳥取県内外のアート作品展示の場で鑑賞ファシリテーションを実施している経験や教育現場での美術教育実施を通じて、身を持って明言できることである。生み出すだけではなく受け止めて考え咀嚼することも立派なアート活動なのだ。究めることも大切だが、裾野を広げて普及することも同時にしていかなければならない。そのため「SOI STANCE」のアート活動は、生み出す・発表するだけではなく、作業所の利用者にとって普及のためのアート活動だと言えることが出来る、とここに記しておきたい。

「ケアとアート」という考えがコロナ禍以降2021年より広まってきているのだが、「SOI STANCE」の活動の核が「ケア」であり、そこにアート活動があることで「ケアとアート」を地で行くのが「SOI STANCE」という作業所でありプロジェクトなのでは、と捉えることも出来る。そこには「作業療法士」というリハビリ職がアート活動をするをいうことが大切な要素である。

また、アート作品「わたしとあなたのあいだにあるもの」は現代美術の文脈におけるインスタレーション作品の他ならない。非常に残念なのは、この作品及びアートプロジェクトが現時点では1日しか展示されていないということだろう。あいサポート・アートセンターからの補助金支援もあったとのことだが、アート人材がチームに入れば別の資金調達に対して行動することが出来、1日では終わらない展開があったかもしれない。今後機会があれば、展示する時間や場所を確保し、何らかの資金援助を得て作品やアートプロジェクトを普及するための展示に関わる制作物の作成や会場費に充てると良いのかもしれない。障がい者の声から生まれたアート作品は十分に現代美術の文脈に乗るものであると言い切っていきたい。

インタビューの中で鎌田さんにアート人材の考えをお聞きしたが、すぐに動けるような状況では無く、人材マッチングの必要もある。これ以上、チーム内での手弁当や人材確保が難しければ、あいサポート・アートセンターやTPlatが協力やプロジェクト運営サポートが可能な該当人材派遣などをしていく未来もあり得るのではないだろうか。人手不足や該当する人材確保が難しいなど、いろいろな課題がある中で支援するのが中間組織の役割の一つでは、とインタビューを通じて本事業を主導する側に突きつけられた課題となったように捉えている。