TPlat

寄付のお願い

創造的な活動を相互にみつめ支え合う TPlatのピアレビュー

竹内潔

2025.01.15

TPlatにおけるピアレビューのサイクル

創造的な活動をどう「評価」するのか?

 TPlatの会員団体がこれまでに取り組んできたアーティスト・イン・レジデンス(AIR)などの取り組みの成果として、「アーティストの視点で地域の魅力や創造性が見いだされ…」などと説明することがあります。しかし、扱っている「アート」のあいまいさもあり、具体的に現場で何が起きているのか、そのことにどんな意義があるのかといったことを、広く人々に伝え、共有することには常に困難が伴ってきました。運営のために公的な助成金を得ることもあり、その場合は、助成団体に対して事業成果の「評価」を含む「説明責任」が求められます。
これまでは、そうして求められるがままに、集客数や来場者の満足度の割合などを添えて報告をすることで済ませることもままありましたが、それだけでは見落とされているものがあるという課題意識を持つ団体も多くありました。

 そこで、TPlat設立にあたっては、各団体のこれまでの取り組みの実績をアーカイブとして取りまとめるとともに、その成果を適切に評価し、ことばにして伝える仕組みを考えることにしました。「評価」と言うと、外部の専門家らによって客観的に良し悪しを判断するイメージがあります。そのような視点ももちろん重要ですが、TPlatで、主催者や創作にかかわるアーティスト等をはじめとする関係者の思い(主観)も汲みつつ、何が目指され、どこまでそれが実現できたのかを同じ目線で対話してことばとして紡ぐことを目指すことにし、「ピアレビュー」のスタイルをとることとしました。

 TPlatの前身となる「鳥取藝住実行委員会」では、ウェブマガジン「+〇++〇」において、「ライター」と呼ばれる人たちが様々な取組を独自の視点で取材し、記事として紹介するという仕組みが確立されていました。「ライター」の中には自らも主体的に取り組みを行っている人もいて、自らの取り組みに取材先のノウハウを活かそうという視点(興味)をもともと持っていたのではないかと思います。どちらかというと「主観」に寄りがちなこの取材・記事化のサイクルに、助成団体や第三者も求める客観的な指標によるデータも把握する仕組みとして、評価シートを作成しました。これは、「鳥取藝住祭」(2014-2015)の終了後に作成を試みながら完成・活用に到らなかったシートを発掘し、ブラッシュアップしたものです。

ピアレビューシステムのサイクル

 こうして整えたTPlatのピアレビューシステムのサイクルは次のようなものです。

(1)マッチング
 まず、評価(レビュー)を受けようとする団体や個人と、それを評価(取材)したいと思うレビュアーをマッチングします。

(2)評価シート記入
 レビューを受ける側は、予め評価シートに活動に関する情報を記入します。評価シートは、雛形を用意していますが、必要に応じて項目をアレンジし、活動の趣旨に合わないものは無理に記入せず、むしろその違和感についても後のインタビューで語ってもらいます。また、レビュアー独自の視点で聞きたいことを予め加えておくこともできます。

(3)インタビュー
 レビューシートが書きあがったら、レビュアーによるインタビューを行います。インタビュイーは、活動団体の代表者に限らず、複数名によるグループインタビューとなる場合もあります。
取材対象の活動に関連する公演や展示その他のイベントがあれば、予め鑑賞・参加しておいたり、そのイベントに合わせてインタビューを行うこともあります。
インタビューでは、レビューシートに記入されたことやレビュアー自身の興味関心に基づいて、多様なエピソードを聞き出します。

(4)記事化
 インタビュー等の取材を元に、記事を執筆し、本サイト上で公開していきます。
 記事化されたものを、広く一般市民や助成団体をはじめとするステークホルダーに読んでもらうことで、その意義を理解してもらうことが可能になるということをねらっています。
 また、活動団体が記事化された文章を読むことで、自身の活動の意義に改めて気づかされる、という効果も期待されます。

 このピアレビューシステム自体も、実例を積み重ねながら改善していきたいと考えています。
 レビューを受けてみたい、レビュアーをやってみたい、などのご希望がありましたら、ぜひお問い合わせください。